スタニワフ・レム睡眠

読んだ本とか見た映画とかの感想、他にも虚構とも妄想ともつかぬことをつらつら語ろうかと

レヴェナント

アメリカ西部の原野、ハンターのヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)は狩猟の最中に熊の襲撃を受けて瀕死(ひんし)の重傷を負うが、同行していた仲間のジョン・フィッツジェラルドトム・ハーディ)に置き去りにされてしまう。かろうじて死のふちから生還したグラスは、自分を見捨てたフィッツジェラルドにリベンジを果たすべく、大自然の猛威に立ち向かいながらおよそ300キロに及ぶ過酷な道のりを突き進んでいく。

今年度一番の傑作かもしれん

まず映像、冒頭のインディアン達との戦闘シーンが素晴らしい。プライベートライアンの冒頭30分間のオハマビーチもかくやといわんやばかりの死屍累々ぷり、しかもそれがアレハンドロ監督のお家芸とも言える長回しでかかれているのだからもう言葉も出ないほどだ。グリズリーとの戦いも素晴らしい。あのシーンに関してはクマコワイとしか表現できない。

これらの特に素晴らしいカットは主人公のグラスが復讐を決意する前の、本筋に入る前のものではあるけれどこの時点で心を鷲掴みにされた、といっても過言ではない。

突出した画的な見せ場が終わってからはどうかと言うとこれもまた良いのだ。最愛の息子を殺され復讐のみに生きるデカプリオ演じるグラス。彼の息子を殺し逃避行を続けるトム・ハーディー演じるフィッツジェラルド、白人に拐われた娘を奪い返すために交渉で手にいれた馬を駆るインディアンの長。三者三様の動きを見せてそれがまた観客を魅せるのだ。

坂本龍一による音楽もまた作中の雰囲気にフィットしている。この映画ではタルコフスキーの映画のように自然が奏でる音もまたbgmの役割を果たしているのだが坂本龍一の音楽はそれを邪魔しない、寧ろ自然の環境音と坂本龍一の音楽は互いに高めあってそのどちらでもありながらそのどちらでもないものを作り上げているのだ。

またこの映画、この世界を覆っている雰囲気は突出してものであると思う。同監督の作品バードマンではラテンアメリカ文学的、マジックリアリズム的な演出、構成が用いられていたが今作でもそれが遺憾なく発揮されていた。夢とも現実ともつかない回送シーン、黄昏の空をバックに墜ちる隕石、それらの集合としてこの映画で描かれるアメリカはさながら実際にあったアメリカであってどこにも存在しないアメリカとなっている。さながらそれは百年の孤独のマコンドのような雰囲気である。

最後の最後で(回送も含めて)一回も涙を見せなかったグラスがあるものを見て涙を流すシーンは不覚にも泣きそうになった、て言うか泣いた

その他のこととしては
フィッツジェラルドがいい感じに真性のクズ、極悪人というよりもクズ。あれを演じたトム・ハーディーは凄い。
・どうも史実だと子供を殺されたとかなさそうなんだけど監督がいれたのかな?毎回家族をテーマにしてるし→アレハンドロ監督
・グラスが1度殆ど死んで復活したのはやっぱりキリストモチーフかね