スタニワフ・レム睡眠

読んだ本とか見た映画とかの感想、他にも虚構とも妄想ともつかぬことをつらつら語ろうかと

アイアムアヒーロー

凄いもんを観た

まずは原作の話の時点でこの漫画は凄いのだがなにが凄いかというとTV版エヴァ並にばらまかれる謎やらそれまでのゾンビものでは見られなかった構図や表現とか色々あるけれど個人的に一番凄まじいのはその写実性、有り体にいうとリアルさである。絵もリアルなんだけど、キャラの描き方という点である。僕自身としては人間の心情を豊かに描いた、てな類いの謳い文句はあまり信用おけない。というか胡散臭く感じてしまうんだけど、アイアムアヒーローはカメラで撮ったような、世界をそのまま切り取ったような描きかたをしている。そこにあるのはあくまでも内面ではなくキャラごとの行動だ。花沢健吾はこのキャラはこういう性格だ!てなことを殊更に叫ぶのではなく、こんな行動するやついるよね?こんな発言するやついるよね?といった感じだ。そしてそれによって1巻まるごと使って写実的に描かれた日常が崩壊するプロセスと崩壊後の違う常識と倫理観で生きながらもそれまでの日常を引きずった行動をするキャラが丹念に描かれている。

映画は短いながらも日常からの崩壊というプロセスをきっちり描ききってる。圧縮しながらも原作のエッセンスを、こんな感じの奴はこういう行動するよなって感じを再現する。特に絵的なもので言えば前半の逃亡シーンとラストの銃撃戦は原作超え。してるかもしれない。前半の見せ場な逃亡はどこから来るのか解らないZQNは心底恐ろしいし、終盤の銃撃戦を終えた後の倒したZQNの死骸の山を前に英雄が立ち尽くすシーンは不謹慎ながらもとても美しいのだ。あのシーンだけでパンフレットは買う価値があると思う。原作のエッセンスを詰め込みながらよりゾンビものとしての出来を追求した(原作は傑作だがゾンビもの以外の要素での加点が多い感じ)最高の映画化だと感じた。

不満点もないことはない。ひろみが話を動かすのに都合の良いキャラになってたとこ。前半部分と後半部分を接続するためだけに出てきた感が少し残念。

その他
・キャストはまりすぎ、大泉洋の英雄を始めモブに至るまで外れが一人もいない。でも塚地の三谷さんは正直反則だと思うのだが……
・ZQNの眼がロイコクロリディウムに寄生されたカタツムリみたいでとても気持ち悪くて最高。
・ボウガンパクったはいいけど録に使いこなせないでZQNに食われるシーンとか細かいながらもよく考えられてた。まぁ普通奪ったばっかで馴染みのないボーガンじゃこうなるよなって感じ。